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ロイが来て最初の頃のことはあまり鮮明に覚えていない。
農作業に毎日出る時期になっていたから、軽トラの後ろにロイを乗せ畑に連れて行った。
猟に行くのに乗り慣れていたのかは定かではないが、割とすんなり軽トラに乗り込む。
畑に着きしばらくウロウロした後は草の上に座り、気持ち良さそうに春の風を受ける姿や表情がとても優雅に見えて印象的だった。
これまで触れ合ったことのないような犬種。
顔はいかつく傷だらけ。
口元はダルンダルン笑
耳も長く垂れている。
その顔をついマジマジと観察している自分がいた。
嬉しいとか怒ってるとか不安だとか、表情を見てとれることはほとんどなかった。
ただ、いつでも何か言いたげに見えたし「おまえたち人間どもは何もわかってない」とでも言っているような顔にも見えて
私は「ふてぶてしいわ〜」と、いつも笑いながら言っていた。
ゴンは外につながれてるとその近くで用を足していたが、
ロイは自分の住処のまわりで用を足すのは嫌だったのかそういう習慣がなかったのか、用を足したくなると鳴いて教えた。
そもそもリードに繋がれているということさえこれまでなかったかもしれない。
ロイは次第に用を足す以外にも鳴き出して鳴き止まないということが出てきた。
ご飯が足りないのか、不安なのか、どこか痛かったりするのだろうか、はたまた誰かを呼んでるのだろうか、、、。
そんなときにできることはご飯を更に少しあげたり、庭を歩いたり、「どうしたの?」と頭を撫でてみたりすることくらいだった。
一度寝てしまうとかなり長いことよく眠っていたが、鳴き出すと止まらない。「ウォン!」と繰り返し鳴く声への対応に疲弊し家族で頭を抱えるようなときもあった。
これまで『猟犬』という言葉は耳にしたことがあったけど、果たしてそれがどんなことをする犬なのか知らなかった私は、ネットで検索したりYouTubeの猟犬日誌のような動画を観て少しでもロイのことを知ろうとした。
そこにはこれまで生きてきた中で知らなかった世界があった。
猟犬ということばに、「猟師さんが鉄砲で撃ち落とした鳥を咥えてくる」くらいのイメージしかなかった私には衝撃的だった。
山の中の道なき道を走り回るのだから、体は本当にたくましい。
擦り傷切り傷を作りながらも仲間と共に突進していき、ときには猪と体当たり勝負で大怪我を負うことも。
それでもご主人様の笛を合図にチームで励ましあったり力を合わせて獲物を捕らえるというような、素人には計り知れない世界観があることもわかった。
猟犬が全てそうとは限らないけど、食べるものはやっぱり鳥とか猪とか鹿肉とか。
そんなことを踏まえてロイを眺めると、ドッグフードなんてものは食べたことがないかもしれないし
推定年齢12歳以上だから引退はしてただろうけど、大自然の中を駆け回る過酷な生活からいっぺん、人間の家でぬくぬくとしてるのはなんだか可哀想にも思えた。
ロイが鳴くたびにご主人様や仲間を呼んでるのかなと少し切なくなった。
預かり犬「ロイ」のこと③につづく。